m 次正方行列 A 、n 次正方行列 B 、 行列 C が与えられたとき、 行列 X に関する方程式
… (1)
を Sylvester の方程式という。
であるから、この行列の (i,j) 成分における の係数は である。そこで
に新しい順序を
で定義する。すなわち
でもって に順序を入れる。
この順序に基づいて
と定め、
なる新しい mn 次正方行列を定義すると、(1) は
… (2)
と書き直せる。 が正則ならば、(2) はただ一つの解を持ち、したがって (1) もただ一つの解を持つ。
簡単のために、A , B がともに上三角行列の場合を考えると
故、 もまた上三角行列で、その対角成分は であるから、(2) が一意に解を持つ条件は
… (3)
である。
ところで、A , B が一般の行列の場合でも、適当な m 次および n 次の unitary 行列 U , V を用いて、 が上三角行列となるように出来るから、(1) は
… (1)
と書き直せる。
と置きなおせば、Y についての方程式
が一意に解を持つ条件は、 が上三角行列であることから (3) が適用できる。このとき として X も一意に求まる。
ところで の対角成分は、各々 A , B の固有値に他ならないから、Sylvester の方程式が一意に解を持つ条件は、A の固有値全体の集合と B の固有値全体の集合が共通部分を持たないことである、と結論付けられる。