待ち行列理論(その 1)

これからしばらくは待ち行列理論にお付き合いいただきます。とりあえず独特の用語が多いので、最初に用語の定義だけしておきます。

平均到着間隔と平均到着率

客の到着間隔を確率変数と見たとき、その従う分布を到着分布と言い、その期待値を平均到着間隔と言います。また、平均到着間隔の逆数を平均到着率と言い、これを一般的には \lambda で表します。

平均サービス時間と平均サービス率

逆に窓口の側から見たとき、そのサービス時間を確率変数としてみた時の、それが従う分布をサービス分布と言い、その期待値を平均サービス時間と言います。また、その逆数を平均サービス率と言い、これを一般的には \mu で表します。

トラフィック密度

窓口の数を s とするとき \rho=\frac{\lambda}{s\mu}トラフィック密度と言います。\rho \lt 1 のとき、待ち行列は時間の経過とともに平衡状態に落ち着くことが知られています。

待ち行列の長さ、系の長さ

サービスを受けるのを待っている(つまり、まだサービスを受けていない)客の数の平均を待ち行列の長さと言い、L_q で表します。これに、今現在サービスを受けている客の人数を加えたものを系の長さと言い、L で表します。

列待ち時間、系待ち時間

客が行列に並び始めてから、サービスを受け始めるまでの時間の平均を列待ち時間と言い、W_q で表します。また、並び始めてからサービスを受け終わるまでの時間を系待ち時間と言い、W で表します。

呼損率

待ち行列の長さに制限があるとき、客が待ち行列に並ばずに立ち去る確率のことを呼損率と言います。

ケンドール記号

待ち行列の型はケンドール記号と言われる記号によって表されます。到着分布を A、サービス分布を B、窓口の数を s待ち行列の長さの制限を N で表すとき、A/B/s(N) と表します。なお、N=\infty のときは省略形として A/B/s と表します。分布を表す記号としては以下のものが使われます。

分布記号 分布
M 指数分布
D 単位分布
G 一般分布

なお、単位分布とは、ある定数 c について P(X=c)=1 となるような分布のことで、デルタ分布とも言われます。この他にも、アーラン分布と呼ばれる分布を表す E_k などもあります。