型待ち行列
まずは、最も基本的な 型待ち行列を解析してみましょう。時刻 の時点での系の長さが である確率を で表します。
時刻 の時点で系の長さが 0 である確率 を求めてみましょう。以下の 4 パターンが考えられます。
- 時刻 の時点で系の長さが 0 で、時刻 の間に一人も客が到着しない
- 時刻 の時点で系の長さが 0 で、時刻 の間に一人の客が到着し、時刻 の間に一人のサービスが終了する場合
- 時刻 の時点で系の長さが 1 で、時刻 の間に一人も客が到着せず、時刻 の間に一人のサービスが終了する場合
- その他の場合
1. の場合の確率は です。
2. の場合の確率は です。
3. の場合の確率は です。
4. の場合の確率は とみなせます。
以上を全てまとめると
となり、 として
と微分方程式が立ちます。これは一階線型ですが、未知関数 が含まれているのでこのままでは解けません。
の場合も考えてみましょう。以下の 5 パターンが考えられます。
- 時刻 の時点で系の長さが で、時刻 の間に一人の客が到着し、時刻 の間に一人もサービスが終了しない場合
- 時刻 の時点で系の長さが で、時刻 の間に一人も客が到着せず、時刻 の間に一人もサービスが終了しない場合
- 時刻 の時点で系の長さが で、時刻 の間に一人の客が到着し、時刻 の間に一人のサービスが終了する場合
- 時刻 の時点で系の長さが で、時刻 の間に一人も客が到着せず、時刻 の間に一人のサービスが終了する場合
- その他の場合
1. の場合の確率は です。
2. の場合の確率は です。
3. の場合の確率は です。
4. の場合の確率は です。
5. の場合の確率は とみなせます。
以上をまとめると
となり、 として
と微分方程式が立ちます。
まとめると
となり、無限個の微分方程式系が出来上がります。これが簡単に解ければ良いのですが、実はこの微分方程式系を解くのは容易ではありません。そこで、 のとき、待ち行列は で平衡状態に落ち着くはずであろう*1、と考えて、漸近的な挙動を調べることになります。(続く)
*1:実際そうなのですが、それを証明するのは非常に困難です。