位相空間を様々な方法で定義する(その 7・最終回)

近傍系を与えることによる定義(続き)

示すべきことは
x\in V^\circ\Leftrightarrow V\in\mathbf{V}(x)
です。まず x\in V^\circ とします。このとき V^\circ\in\mathcal{O} なので V^\circ は (*) を満たします。すなわち V^\circ\in\mathbf{V}(x) が成り立ちます。そして V^\circ\subset V なので 2. により V\in\mathbf{V}(x). 故に
x\in V^\circ\Rightarrow V\in\mathbf{V}(x)
が成り立ちます。ここまで、近傍の性質の 2. と 3. しか用いてないことに留意しましょう。

x\in X を一つ固定し、V\in\mathbf{V}(x) とします。この状態で、V\in\mathbf{V}(y) を満たす y\in X の全体を U とします。すなわち
U=\{y|V\in\mathbf{V}(y)\}
とします。このとき、V\in\mathbf{V}(x) なので x\in U です。また y\in U ならば V\in\mathbf{V}(y) なので性質 1. により y\in V、したがって U\subset V です。以下、U が (*) を満たすことを示します。

zU の任意の点とするとき V\in\mathbf{V}(z) ですから、性質 4. により W\in\mathbf{V}(z)y'\in W ならば V\in\mathbf{V}(y') となるものが存在します。このとき U の定義から y'\in U なので W\subset U です。そして W\in\mathbf{V}(z) だから U\in\mathbf{V}(z)、以上により
z\in U\Rightarrow U\in\mathbf{V}(z)
が成り立ちます。すなわち U は (*) を満たすので開集合です。ここで U\subset V だったから U\subset V^\circ、かつ x\in U だから x\in V^\circ。以上で
V\in\mathbf{V}(x)\Rightarrow x\in V^\circ
も示されました。

まとめ

結局、開集合系、閉集合系、開核作用子、閉包作用子、近傍系のいずれを与えても、そこから開集合系を再現することができるので、位相を定義する、とは上記のうちのどれかを空間に対して与えることと解釈できます。以前も書きましたが、位相とは開集合系そのものを指すのではなく、それらが定める空間の数学的な構造のことを指すのです。

なお、この他にも開基、基本近傍系などを与えることによっても開集合系を定めることができますが、それらについては割愛したいと思います。お付き合いくださりありがとうございました。