数学・解析

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 13)

久々に本筋に戻ります。 区間 上の二つの連続な単調増加関数 が与えられたとき、その Lebesgue - Stieltjes 測度が一致する、すなわち となるのはどんなときでしょう。もし ならば、任意の に対して が成り立ちます。これを整理すると となるので、 は定数、…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 12)

測度の絶対連続と絶対連続関数の関係 定理 区間 上の単調増加関数 から定義される Lebesgue - Stieltjes 測度 が、Lebesgue 測度 に関して絶対連続、すなわち となる Borel 可測関数 が存在するための必要十分条件は、 が絶対連続関数となることである。 (証…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 11)

絶対連続関数 区間 で定義されている関数 が以下の条件を満たすとき、 は絶対連続であると言います。 任意の と任意の に対して適当な が存在し であるような で を満たすものに対して、常に が成り立つ。 この条件で としたものは、ちょうど一様連続性の条…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 10)

さて、単調増加関数 から作られる Lebesgue - Stieltjes 測度 が Lebesgue 測度 に関して絶対連続であるとします。このとき が成り立つので は 上連続となる*1ことに注意します。 一方、Radon - Nikodym の定理により となる Borel 可測関数 が存在します。…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 9)

これまでの議論によって、 が正則測度であることが示されました。このことによって、測度空間 は、 の完備化になっていることがわかります。従って、今後の議論は 可測集合とするところを Borel 可測集合に置き換えても、積分を論じる上では問題が無いことに…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 8)

Lebesgue - Stieltjes 測度の性質(続き) 次に、任意の 可測集合 に対して *1 となるものが存在することを示します。 に対して となる開集合 が存在します。このとき は閉集合で となります。 故 となるので となります。特に、 の場合 、各 は有界閉区間で …

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 7)

どうも手順前後している感が否めませんが、とりあえず続けます。 Lebesgue - Stieltjes 測度の性質(続き) は 有限測度になります。実際、基礎となる区間 が有界閉区間であれば は有限測度だから明らかです。そうでないときは、 を内側から近似する有界閉区間…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 6)

正則測度 測度空間 において、 が局所 compact Hausdorff 空間の場合を考えます。このとき が 1. は完備 2. 3. が compact なら 4. なる任意の に対して、任意に を取ると、開集合 と compact 集合 で を満たすものが存在する を満たすとき、 は正則測度であ…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 5)

以下、 は区間 上の単調増加関数とします。 Lebesgue - Stieltjes 測度の性質 一点からなる集合 は 可測です。それを知るには、 なる集合に対して を示せばよいことになります。このことは、直ちに明らかとは言えませんが、示すことはさほど難しくないと思い…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 4)

第一種不連続点と単調増加関数 一変数関数 において がともに存在し、かつ両者の値が等しくないとき、 を の第一種不連続点と言います。 定理 を区間とする。 上の単調増加関数 の第一種不連続点は高々可算個である。 (証明) 任意の区間は高々可算個の閉区間…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 3)

Lebesgue - Stieltjes 測度の性質をいろいろと論ずる前に、少し測度論の復習(?)をします。 Carathéodory の外測度と完備測度 基礎となる集合 に対し、 (つまり を値に取ることも許す)が を満たすとき、これを 上の Carathéodory の外測度あるいは単に外測度…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 2)

参考書 順番が前後しましたが、測度論に関する参考書を 3 冊ほど挙げておきます。 ルベーグ積分 (現代数学レクチャーズ B- 7)作者: 竹之内脩出版社/メーカー: 培風館発売日: 1980/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見るルベー…

Lebesgue - Stieltjes 積分(その 1)

単調増加関数に関する Lebesgue - Stieltjes 測度 を区間とし、 上で単調増加する関数 を与えます。このとき、 に対して、開区間 の測度を と定めます。そして に対して、 を に含まれる高々加算個の開区間で覆います。 このとき として、可能な被覆 に関す…

Radon - Nikodym 微分(その 10・最終回)

有限な正測度の Radon - Nikodym 微分 最後に、Radon - Nikodym の定理から得られる、次の定理を証明しておきます。 定理 を 有限な測度空間とする。 を 上の 有限な正測度で に関して絶対連続とする。このとき、いたるところ有限な値をとる可測関数 が存在…

Radon - Nikodym 微分(その 9)

Radon - Nikodym の定理の証明(その 4) 次に、 が 有限の場合を考えます。このときは を満たす可測集合列が存在します。そして各 上では を満たす 上非負でいたるところ有限な積分可能関数 が存在します。そこで として得られる関数 を考えれば、 かつ は可…

Radon - Nikodym 微分(その 8)

Radon - Nikodym の定理の証明(その 3) 前回定義した が求めるものであることを示します。 を有理数で なるものとし、 を細分して とします。このとき ならば が成り立ちます。故に です。また も成り立ちます。従って となります。 ここで として について…

Radon - Nikodym 微分(その 7)

Radon - Nikodym の定理の証明(その 2) 前回定義した集合族 を用いて、 を と定めます。 により、 はいたるところ有限な値をとる関数です。 は容易にわかります。また、 ならば なる が存在しますが、 なので も成り立ちます。従って、任意の実数 に対し は…

Radon - Nikodym 微分(その 6)

Radon - Nikodym の定理 いよいよ Radon - Nikodym の定理を証明します。証明は長いので数回に分けますが、まず定理の主張を述べておきます。 定理(Radon - Nikodym) を 有限な測度空間とする。 が 上の に関して絶対連続な実測度ならば、いたるところ有限な…

Radon - Nikodym 微分(その 5)

Lebesgue の分解定理 定理 測度空間 に対し、 上の 有限測度(または実測度)は ただし は に関して絶対連続な測度(または実測度) は と互いに特異なな測度(または実測度) と分解できる。さらに があって と表される。しかもこの分解は一意的である。 これによ…

Radon - Nikodym 微分(その 4)

以下、通常の意味での測度を正測度と呼ぶことにします。 測度の絶対連続 を測度空間 上の積分可能な関数とするとき は実測度です。この実測度は次の性質を持ちます。 ならば 任意の に対して、適当に を取れば が成り立つ。 二番目については とおけば だか…

Radon - Nikodym 微分(その 3)

Hahn の分解定理 補題 4 により、可測空間 と、その上の実測度 が与えられると、可測集合 で ならば ならば を満たすものが取れることがわかりました。この を用いて とおくと かつ が成り立ちます。ここで は とも表せます。当然 ですが、この意味でこの分…

Radon - Nikodym 微分(その 2)

実測度の性質(続き) 前回の続きです。 補題 4 とすれば、 となる が存在して ならば ならば となる。

Radon - Nikodym 微分(その 1)

今回は、通常の微分を少し拡張した Radon - Nikodym 微分について解説します。 実測度 を可測空間とします(可測空間の定義については id:redcat_math:20060106 を参照)。 の各集合に対して ならば を満たす関数 を 上の実測度と言います*1。通常の測度との違…

分数回の微積分 !?(後編)

Riemann-Liouville 微分作用素 前回定義した Riemann-Liouville 積分作用素は、ある種の積分方程式を考える上で現れたものです。そこで、その積分方程式を解く意味で、Riemann-Liouville 積分作用素の逆作用素を考える必要があります。 とします。このとき、…

分数回の微積分 !?(前編)

今回は、分数回の微積分と呼ぶにふさわしい作用素を紹介します。 使用する函数空間 とします。そして、今後使用する二つの函数空間を定義しておきます。 (1) であるとは、任意の に対し が成り立つこととします。 (2) なる任意の に対して、 上絶対連続とな…

Fourier 級数で二つの zeta を求める

とおきます。これは周期 の区分的に滑らかな函数なので Fourier 級数展開が出来ます。その結果は となります。特に のとき となります。ここで を代入すると となるので、整理して を得ます。 同じ Fourier 級数に、今度は Parseval の等式を適用すると を得…

続・1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(後編)

前回の続き。 の和を求めるもう一つの方法です。 とおきます。これは周期が の区分的に滑らかな函数なので Fourier 級数展開が出来ます。実際に展開すると となります。特に のとき が成り立ちます*1。ここで を代入*2すると となるので を得ます。 同じ答を…

続・1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(前編)

以前、交代級数 の和を求めてみましたが、これに別な解法がありました。 のとき を利用します。これを 0 から まで項別積分すると となります。右辺の級数は Abel の連続性定理により [0,1] で一様収束し、左辺を f(x) とおくとき となります。ここに となり…

1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(後編)

式 (1) と 式 (2) の x の係数を比較して を得る。ただし 。 ここで とおくと 故 を得るので、両辺を 2 倍して を得る。ちなみに とおけば 故 という、よく知られた Leibniz の級数を得る。 …とまあ、ちょっとした級数の計算を今回はやってみたわけですが、…

1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(前編)

という、ちょうど分母が 3 の倍数であるところだけが抜けた交代級数は収束します。この値を、「オイラーの無限解析」に沿いつつ、なおかつ現代風に攻めてみます。 において、分母分子に sin の無限積展開 を適用すると と表せる。そこで と置いて を満たすよ…