Radon - Nikodym 微分(その 6)

Radon - Nikodym の定理

いよいよ Radon - Nikodym の定理を証明します。証明は長いので数回に分けますが、まず定理の主張を述べておきます。

定理(Radon - Nikodym)

(S,\mathcal{M},\mu)\sigma 有限な測度空間とする。\varphi(S,\mathcal{M}) 上の \mu に関して絶対連続な実測度ならば、いたるところ有限な値をとる積分可能な関数 f(s) が存在して
\varphi(M)=\int_M f(s)d\mu(s)
となる。この f は、測度 0 の集合上を除いて一意に定まる。

Radon - Nikodym の定理の証明(その 1)

\varphi が正の実測度、\mu が有限測度の場合を考える。有理数 r>0 に対して
\varphi_r(M)=\varphi(M)-r\mu(M)
とおく。この \varphi_r の Hahn 分解において
{\varphi_r}^+(M)=\varphi_r(M\cap P_r),{\varphi_r}^-(M)=-\varphi(M\cap{P_r}^c)
を満たす集合 P_r を考える。

  1. M\subset P_r ならば \varphi(M)\geq r\mu(M)
  2. M\cap P_r=\emptyset ならば \varphi(M)\leq r\mu(M)

である。r(1)<r(2) のとき N_{r(1),r(2)}=P_{r(2)}\cap P_{r(1)}^c とおくと

  • \varphi(N_{r(1),r(2)})\leq r(1)\mu(N_{r(1),r(2)})
  • \varphi(N_{r(1),r(2)})\geq r(2)\mu(N_{r(1),r(2)})

が成り立つから、\mu(N_{r(1),r(2)})=0 でなければならない。故に
N=\bigcup\{N_{r(1),r(2)}:0<r(1)<r(2)\}
とおけば \mu(N)=0 である。従って、\varphi\mu に関して絶対連続だから \varphi(N)=0 でもあるゆえ、P_rP_r\cup N に取り替えても上記 1,2 は成り立ち、なおかつ r(1)<r(2) のとき P_{r(1)}\cup N\supset P_{r(2)}\cup N となるから、初めから
r(1)<r(2) ならば P_{r(1)}\supset P_{r(2)}
であるとして良い。また
N_\infty=\bigcap_{r>0}P_r
とおくと任意の r>0 に対して N_\infty\subset P_r だから \varphi(N_\infty)\geq r\mu(N_\infty) である。\varphi(N_\infty) は有限値だから、これが成り立つためには \mu(N_\infty)=0 でなければならない。故に \varphi(M_\infty)=0 であり、P_rP_r\setminus N_\infty で置き換えても上記 1,2 は成り立つから、そのようにすることによって
\bigcap_{r>0}P_r=\emptyset
であるとして良い。さらに
P_{+0}=\bigcup_{r>0}P_r
とおくと任意の r>0 に対して P_r\subset P_{+0}、すなわち {P_{+0}}^c\subset{P_r}^c だから上記 2 によって
0\leq\varphi({{P_{+0}}^c)\leq r\mu({{P_{+0}}^c)
となるので \varphi({{P_{+0}}^c)=0 となることに注意する。ただし一般に \mu({{P_{+0}}^c)=0 とは限らない。
(続く)