2007-01-01から1年間の記事一覧

Radon - Nikodym 微分(その 10・最終回)

有限な正測度の Radon - Nikodym 微分 最後に、Radon - Nikodym の定理から得られる、次の定理を証明しておきます。 定理 を 有限な測度空間とする。 を 上の 有限な正測度で に関して絶対連続とする。このとき、いたるところ有限な値をとる可測関数 が存在…

Radon - Nikodym 微分(その 9)

Radon - Nikodym の定理の証明(その 4) 次に、 が 有限の場合を考えます。このときは を満たす可測集合列が存在します。そして各 上では を満たす 上非負でいたるところ有限な積分可能関数 が存在します。そこで として得られる関数 を考えれば、 かつ は可…

Radon - Nikodym 微分(その 8)

Radon - Nikodym の定理の証明(その 3) 前回定義した が求めるものであることを示します。 を有理数で なるものとし、 を細分して とします。このとき ならば が成り立ちます。故に です。また も成り立ちます。従って となります。 ここで として について…

Radon - Nikodym 微分(その 7)

Radon - Nikodym の定理の証明(その 2) 前回定義した集合族 を用いて、 を と定めます。 により、 はいたるところ有限な値をとる関数です。 は容易にわかります。また、 ならば なる が存在しますが、 なので も成り立ちます。従って、任意の実数 に対し は…

今後の予定など

最近、あまり高校生向けの話題を書いて無いなぁ。ということで、Radon - Nycodim 微分と Lebesgue - Stieltjes 積分(と、両者の関係)に決着が付いたら、高校生向けに 論法の話でも書こうと思います。

Radon - Nikodym 微分(その 6)

Radon - Nikodym の定理 いよいよ Radon - Nikodym の定理を証明します。証明は長いので数回に分けますが、まず定理の主張を述べておきます。 定理(Radon - Nikodym) を 有限な測度空間とする。 が 上の に関して絶対連続な実測度ならば、いたるところ有限な…

Radon - Nikodym 微分(その 5)

Lebesgue の分解定理 定理 測度空間 に対し、 上の 有限測度(または実測度)は ただし は に関して絶対連続な測度(または実測度) は と互いに特異なな測度(または実測度) と分解できる。さらに があって と表される。しかもこの分解は一意的である。 これによ…

Radon - Nikodym 微分(その 4)

以下、通常の意味での測度を正測度と呼ぶことにします。 測度の絶対連続 を測度空間 上の積分可能な関数とするとき は実測度です。この実測度は次の性質を持ちます。 ならば 任意の に対して、適当に を取れば が成り立つ。 二番目については とおけば だか…

Radon - Nikodym 微分(その 3)

Hahn の分解定理 補題 4 により、可測空間 と、その上の実測度 が与えられると、可測集合 で ならば ならば を満たすものが取れることがわかりました。この を用いて とおくと かつ が成り立ちます。ここで は とも表せます。当然 ですが、この意味でこの分…

Radon - Nikodym 微分(その 2)

実測度の性質(続き) 前回の続きです。 補題 4 とすれば、 となる が存在して ならば ならば となる。

Radon - Nikodym 微分(その 1)

今回は、通常の微分を少し拡張した Radon - Nikodym 微分について解説します。 実測度 を可測空間とします(可測空間の定義については id:redcat_math:20060106 を参照)。 の各集合に対して ならば を満たす関数 を 上の実測度と言います*1。通常の測度との違…

3 日でわか(らせ)る符号理論(3 日目・夜の部)

リード・ソロモンコードと誤りの訂正(続き) 計算例 I が送られてきたとします。 となります。このことから という連立方程式を得ます。各式の両辺に を掛けて となるので辺辺加えて すなわち を得ます。従って となります。これらのことから となるので すな…

3 日でわか(らせ)る符号理論(3 日目・午前の部)

リード・ソロモンコードと誤りの訂正 さて、リード・ソロモンコード において 番目が だけ変化したとします。つまり、 ビット目に誤りが集中した場合です。このときは となるので として と を求めることができるので、誤りの訂正ができます。

3 日でわか(らせ)る符号理論(3 日目・深夜の部)

リード・ソロモンコード 往々にしてノイズというものは、特定の箇所に集中して発生するものです。そのようなノイズに対して強い検出力を持つのがリード・ソロモンコードです。 リード・ソロモンコードでは 21 ビットを使用しますが、これを 3 ビットごとに区…

3 日でわか(らせ)る符号理論(2 日目・夜の部第 2 部)

と BCH コードと誤りの訂正(続き) 2 ビット誤っていた場合 今度は ビット目と ビット目()が誤って送られた場合を考えます。このときは となります。以下、 とおきます。 故 が成り立ちます。よって は二次方程式 の解です。これを解けば が求まり、どのビッ…

3 日でわか(らせ)る符号理論(2 日目・夜の部第 1 部)

と BCH コードと誤りの訂正 さて、BCH コードを定める行列 に左から を掛けると となり、見通しが良くなります。 1 ビット誤っていた場合 BCH コード に対して、 ビット目が誤って、 が送られてきたとすると となるので、誤りを検出し、かつ訂正ができます。…

3 日でわか(らせ)る符号理論(2 日目・昼の部)

ハミングコードでは、1 ビットの誤りまでは対応できますが、万が一それ以上の誤りがあった場合にもろさを露呈します。そこで、この方法を改良して、もし 2 ビット誤っていた場合でも訂正が効くコードを作ることにします。

3 日でわか(らせ)る符号理論(1 日目)

今日から 3 日間、自身の勉強も兼ねて、符号理論にお付き合いいただくことにしましょう。 パリティビット 7 ビット*1あれば、 種類の情報を表すことができます。しかし、通常は 8 ビット = 1 バイトの単位で情報を扱うことが一般的になっています。 そこで、…

Fermat 数

を非負整数として、 の形の数が素数であるならば、 の形をしてなければならないことは容易にわかります。そこで ( は非負整数)とおいて、これを Fermat 数 と言います。例えば です。Fermat は、この形の数に関して「 は全て素数である」と予想を立てました…

素数が無限個あることの証明

今回は、ちょっと(?)変わった方法で、素数が無限個あることを証明してみます。 (正の)素数の全体を と表すことにしておきます。 整数の全体 に、次のようにして開集合系を定めます。 が開集合であるとは、 が空集合であるか、または、 が空集合でない場合は…

proof.sty

で記号論理の証明図を書ける proof.sty なるファイルがあることを知り、早速ダウンロード。 しかし、証明図を \infer 木に変換するのはかなり面倒かも。UNIX の X Window system 上で動く xpe(X window system Proof Editor) なるツールはあるらしいが… Wind…

エルデシュは天書の夢を見たか

天書の証明作者: M.アイグナー,G.M.ツィーグラー,Martin Aigner,G¨unter M. Ziegler,蟹江幸博出版社/メーカー: シュプリンガー・フェアラーク東京発売日: 2002/12メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (7件) を見る 原題は "Proofs for THE …

先日のお買い物

Classical Topology and Combinatorial Group Theory (Graduate Texts in Mathematics)作者: John Stillwell出版社/メーカー: Springer発売日: 1995/08/04メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見るLectures on the Hyperreals: An Introduct…

分数回の微積分 !?(後編)

Riemann-Liouville 微分作用素 前回定義した Riemann-Liouville 積分作用素は、ある種の積分方程式を考える上で現れたものです。そこで、その積分方程式を解く意味で、Riemann-Liouville 積分作用素の逆作用素を考える必要があります。 とします。このとき、…

分数回の微積分 !?(前編)

今回は、分数回の微積分と呼ぶにふさわしい作用素を紹介します。 使用する函数空間 とします。そして、今後使用する二つの函数空間を定義しておきます。 (1) であるとは、任意の に対し が成り立つこととします。 (2) なる任意の に対して、 上絶対連続とな…

公理的集合論における自然数の存在(その 13・最終回)

有限集合の要素の個数と自然数の演算 さて、 が有限集合で、 であるとき、実は以下のことが成り立つことが示されます。 、等号は のとき成り立つ。 証明は、いずれも後で紹介する参考書に略解が載っていますので、そちらを参考にしてください。かくして、自…

公理的集合論における自然数の存在(その 12)

べき乗に関する性質 べき乗に関する性質として (1) (2) を挙げておきます。いずれも証明は数学的帰納法を用いますが、もう同じようなことを何度も繰り返すのも面倒なので、定義に基づいて各自で確かめてみてください。 全単射と集合の対等 単射・全射といっ…

公理的集合論における自然数の存在(その 11)

1 から始まる数学的帰納法 これまで用いてきた数学的帰納法は 0 から始まるものでした。しかし、数学的帰納法は、必ず 0 から始まるとは限りません。むしろ、高校で習った(人もいる)ように、1 から始まる場合の方が多かったりします。そこで、そのような場合…

公理的集合論における自然数の存在(その 10)

積に関する性質 今度は積に関する性質を見ていきましょう。 (1) は定義からわかりますので、 を数学的帰納法で示しましょう。 は定義から直ちにわかります。 なので となりますから、数学的帰納法により です。 (2) は定義と和の性質から導かれます。 を数学…

公理的集合論における自然数の存在(その 9)

和に関する性質 前回定義した自然数の和に関する性質を見ていきます。 (1) なので、 となることを数学的帰納法で示します。まず です。次に とすると となって が成り立つので、数学的帰納法により となります。これは、 が恒等写像であることを意味していま…