2007-01-01から1年間の記事一覧

公理的集合論における自然数の存在(その 8)

和・積・べき乗の定義 さて、前回証明した帰納定理を使うと、 と で定まる写像 に対して を満たす写像 が一意的に定まります。この のことを と書き、 と の和と言います。 さらに、この に対して を満たす写像 が一意的に定まります。この のことを または …

公理的集合論における自然数の存在(その 7)

いよいよ自然数の演算を再現します。なお、公理的集合論においては、通常は集合を現すのにアルファベットの小文字を使用するのが慣わしですが、煩雑さを避けるため、大文字等も使用することにします。 帰納定理 定理(帰納定理) とし、 とする。さらに写像 が…

公理的集合論における自然数の存在(その 6)

整列集合 を順序集合とし、 を順序関係とします。以下、面倒なので であるとき と表し、「順序集合 」と書くことにします。 さて、順序集合 の部分集合 に対し、 を満たす が存在するとき、これを の最小元と言い、 と表します。 が全順序集合で、(ただし ) …

公理的集合論における自然数の存在(その 5)

自然数の大小 いよいよ自然数の大小関係を再現します。その前に が成り立つことに注意します。実際 ならば前回の補題により なので となります。また、このことから直ちに が成り立つこともわかります。 さて とおいて、 が任意の自然数 について成り立つこ…

公理的集合論における自然数の存在(その 4)

いよいよ、自然数に大小を定義したいのですが、その前に、一つ補題を示します。 補題 任意の自然数 について *1 (証明) とおく。 と はともに偽だから、 はともに真。 を示す。 ならば である。 ならば により であるから、 により、いずれの場合も が成り立…

公理的集合論における自然数の存在(その 3)

Peano の公理 これから自然数にいろいろな構造を入れていく上で重要な、Peano の公理について説明します。 (P1) に対してある が確定する。 これは写像 が定まっている、とも言い換えられます。 のことを と書いているわけです。 (P2) これは、(P1) で定まっ…

公理的集合論における自然数の存在(その 2)

さて、前回作った が、実は によらないことを示したいわけですが、そのために、もう一つ補題を示しておきます。 補題 (証明) を無限系譜とするとき、 も無限系譜となることは容易にわかります。よって となるので、前回の補題の 2. により が成り立ちます。…

公理的集合論における自然数の存在(その 1)

まぁ、公理的集合論などと言わずとも、自然数は確かに存在しているのですが、それを公理的集合論の中で扱えるように、公理的集合論の中に「埋め込む」作業を、今回はやってみようと思います。 まず という論理式を用意しておきます*1。無限公理により、 が真…

Fourier 級数で二つの zeta を求める

とおきます。これは周期 の区分的に滑らかな函数なので Fourier 級数展開が出来ます。その結果は となります。特に のとき となります。ここで を代入すると となるので、整理して を得ます。 同じ Fourier 級数に、今度は Parseval の等式を適用すると を得…

続・1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(後編)

前回の続き。 の和を求めるもう一つの方法です。 とおきます。これは周期が の区分的に滑らかな函数なので Fourier 級数展開が出来ます。実際に展開すると となります。特に のとき が成り立ちます*1。ここで を代入*2すると となるので を得ます。 同じ答を…

続・1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(前編)

以前、交代級数 の和を求めてみましたが、これに別な解法がありました。 のとき を利用します。これを 0 から まで項別積分すると となります。右辺の級数は Abel の連続性定理により [0,1] で一様収束し、左辺を f(x) とおくとき となります。ここに となり…

オブジェクトは見えていた

以前、d:id:redcat_math:20060522#1148301628 の中で 数学の研究とはまさに「オブジェクトなき戦い」なのかも知れません。 と書いたわけですが、よくよく考えてみると、これは微妙に違うな、と思いました。 先日まで、Zermelo-Fraenkel 公理系をせっせと紹介…

世間的にエイプリルフールな件について

今年は P = NP 問題で一発ぶちかまそうと思っていたら、mixi 内である人が「さすがにそれは拙い」みたいな発言をしていたのを見つけたので、自粛しました。 その代わり、数学に関するエイプリルフールネタを紹介します。 「10 桁で終了」 円周率ついに割り切…

1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(後編)

式 (1) と 式 (2) の x の係数を比較して を得る。ただし 。 ここで とおくと 故 を得るので、両辺を 2 倍して を得る。ちなみに とおけば 故 という、よく知られた Leibniz の級数を得る。 …とまあ、ちょっとした級数の計算を今回はやってみたわけですが、…

1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + …(前編)

という、ちょうど分母が 3 の倍数であるところだけが抜けた交代級数は収束します。この値を、「オイラーの無限解析」に沿いつつ、なおかつ現代風に攻めてみます。 において、分母分子に sin の無限積展開 を適用すると と表せる。そこで と置いて を満たすよ…

集合論の公理系(その 16・最終回)

選択公理 正則性公理の位置づけにはいろいろと議論もありましたが、ひとまずその辺は置いといて、いよいよ最後の公理を紹介します。 選択公理 これは、どれも空でなく、また互いに共通部分も持たない集合の族 z が与えられたならば、その要素たる各集合から…

集合論の公理系(その 15)

正則性公理 さて、 なる集合の存在は、Russel の逆理と密接に関係するなど、いろいろと厄介な事情を引き起こします。出来るなら、そのような集合はない方がありがたいものです。そこで、そのような集合が存在しないことを保証するための公理が、正則性公理で…

集合論の公理系(その 14)

もう少しだけ、分出公理図式の話にお付き合いください。その前に、補題を一つ証明しておきます。 補題 (証明) 和集合の定義により が成り立つ。一方 により だから となる。 定義域と値域 上記補題を元に、分出公理図式で とおくことで なる集合の存在が保証…

集合論の公理系(その 13)

同値関係と商集合 前回、集合 a 上の関係と、特に重要な関係として同値関係を定義しました。今、a 上の同値関係 r が与えられたとき、 に対して と定義すると、 です。そして が成り立ちます。そこで の部分集合である のことを a の(同値関係 r による)商集…

集合論の公理系(その 12)

前回、二つの集合 a , b の直積 を定義しました。今回は、それを用いて、対応・写像・関係のお話をします。 対応と対応の合成、逆対応 二つの集合 a , b に対して、 の部分集合、すなわち の元を、a から b への対応と言います。 を対応とし、 とするとき な…

位数 3 の右零半群(追記)

を使うと

位数 3 の右零半群

どうやら、2 × 2 行列で表現できそうな気がしてきました。近日中に修正できるように、考え中です。

「数検」に挑戦しませんか ?

先日の日記で 今後は、余力があれば、数検 2 級〜準 1 級(中学〜高校)レベルの問題で、面白いものを探してきて、これまでのように読者に解いてもらう、ということもやりたいと思っています。 と書きましたが、これを試験的に形にしてみたいと思います。タイ…

「数学道場」方針変更について

「数学道場」に関して、さまざまな方からご意見をいただくことができました。そこで、方針の変更を図ろうと思います。 まず、こちらからの出題は、今回答を募集している問題で一旦打ち切りたいと思います。そして、逆に問題を受け付けて、私が解く*1形をメイ…

集合論の公理系(その 11)

しばらくぶりでした。今回は、分出公理図式を使って、いろいろな集合を定義してみましょう。 差集合 集合 a , b に対し、分出公理図式で として定まる集合を と書き、差集合と言います。 共通部分(交わり) とします。このとき をひとつ固定して とおきます。…

「道場」挑戦者現れず

自サイトで公開している「数学道場」ですが、なかなか挑戦者が現れてくれません。難度が高いのか、それとも低いのか ? その辺に関する感想などをもらえれば、それを参考にして問題のレベルを設定できるのですが…。

辛辣(?)な一言

上野健爾先生の「複素数の世界 (はじめよう数学)」からの引用です。 (前略) なお複素数は電気工学や量子力学でもなくてはならない数です. 私達が電気を使って豊かな生活ができるのも, じつは私達の知らない所で複素数が大躍躍しているからです. 今日の文明を…

集合論の公理系(その 10)

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。さて、話題の方は昨年からの続きです。 置換公理図式 置換公理図式 が の論理式ならば、次の形の論理式は公理である。 ただし、 は z , v を自由変数として含まないものと…