遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。さて、話題の方は昨年からの続きです。
置換公理図式
- 置換公理図式
- が の論理式ならば、次の形の論理式は公理である。
ただし、 は z , v を自由変数として含まないものとします。その他の自由変数は含んでも構いませんが、そのときは上の論理式を全称扱い*1します。
ここでは、この公理が主張することが何であるかについては置いておいて、これより弱い形の公理を、この公理から導くことにします。
分出公理図式
- 分出公理図式
- を v を自由変数として含まない論理式とするとき、次の論理式は公理である。
これを置換公理図式から導くためには
とおくとうまく行きます。実際、置換公理図式の前提部分が等号公理によって成り立つので
が成り立ちますが
となることから
となって示されます。従って、置換公理図式を認めることにより、我々はこの分出公理図式を自由に用いることが出来ます。
ラッセルの逆理
分出公理図式において、u に関する部分を削除することは出来ません。すなわち
なる形の論理式は認められません。なぜならば、 とおくと
となりますが、このとき特に
という矛盾が生じてしまいます。これが有名なラッセル(Russell)の逆理です。このようなことを避けるため、分出公理図式では、 を満たすような全ての x を一まとめにするのではなく、x をある集合 u に属するものに制限することで矛盾を回避しているのです。
置換公理図式の主張
置換公理図式の前提式
は「与えられた x に対して、 を満たす y は、存在すれば一意に定まる」ことを主張していますから、このことから u の部分集合を定義域として持つ「関数」*2F(x) () が定まります。すると結論の方は
と書けます。つまり、与えられた u に対して v とは「x が集合 u の要素を動くときの、F(x) たちの集合」です。従って置換公理図式は「集合 u と『関数』F が与えられたとき、u の F による像は集合である」という具合のことを主張していることがわかります。
*1:自由変数を全称作用素で閉じること。具体的には d:id:redcat_math:20061124 を参照。
*2:我々はまだ関数の概念を定義していないので、ここではカギ括弧をつけています。