辛辣(?)な一言

上野健爾先生の「複素数の世界 (はじめよう数学)」からの引用です。

(前略)
なお複素数は電気工学や量子力学でもなくてはならない数です. 私達が電気を使って豊かな生活ができるのも, じつは私達の知らない所で複素数が大躍躍しているからです. 今日の文明を享受し, ワープロまで使っている人が「私は 2 次方程式の解の公式は必要としなかった」というのは, 本人の無知をさらけ出しているだけでなく, 数多くの先人の努力に対する冒瀆に他なりません.

数学者らしい、説得力のある言葉だと思います。
「私は 2 次方程式の解の公式は必要としなかった」の部分は、作家の三浦朱門が「私の妻(= 曽野綾子)は二次方程式の解の公式は必要としなかった」という趣旨の発言をしたものを言っていると思われます。
思えば三浦朱門のこの一言で中学数学の教科書から二次方程式の解の公式は消えました*1。「ゆとり」を名目に理数系科目の指導要領は大幅に削減され、学力低下を心配した親たちが我も我もと我が子を塾に通わせる。「ゆとり教育」で得られるはずだったゆとりや家族の団欒の機会は塾通いによって奪われ、結局「ゆとり」とは何だったのか、と思わざるを得ません。
そして今度は「ゆとり教育の見直し」…教育現場の混乱は必至です。
こんなご時世の中、教育(特に数学教育)に携わる方たちには、本当に頭が下がります。

*1:「平方完成の発展」という形で残りましたが。