集合論の公理系(その 15)

正則性公理

さて、t\in t なる集合の存在は、Russel の逆理と密接に関係するなど、いろいろと厄介な事情を引き起こします。出来るなら、そのような集合はない方がありがたいものです。そこで、そのような集合が存在しないことを保証するための公理が、正則性公理です。

正則性公理
\forall a(a\neq\emptyset\to\exists x\in a(x\cap a=\emptyset))
定理
\forall x(x\not\in x)

(証明)
t\in t なるものが存在したとする。\{t\}\neq\emptyset だから、正則性公理により
\exists x\in\{t\}(x\cap\{t\}=\emptyset)
となるはずである。ここで、x\in\{t\} なる x は t しかないので
t\cap\{t\}=\emptyset
でなければならないが
t\in t\cap\{t\}=\emptyset
となり矛盾する。
これでめでたく、t\in t なる集合の存在は(正則性公理によって)否定されたことになります。
さて、今、集合 x に対して、新しい集合 x^+=x\cup\{x\} を定義します。このとき x^+\neq x となります。なぜならば、x^+=x とすると
x\in x\cup\{x\}=x^+=x
となって、上記の定理に反するからです。

練習問題
\neg\exists x\exists y(x\in y\in x)
ヒント
a=\{x,y\} が正則性公理の反例となることを示せ。