クラス(その 1)

以前、当ブログで Zermelo-Fraenkel 公理系を紹介しました。そのうちの一つ、置換公理図式から導かれた分出公理図式を再掲します。

(VII)' 分出公理図式
\forall u\exists v\forall x(x\in v\leftrightarrow x\in u\wedge\psi(x))

この公理によって定まる集合を
v=\{x\in u|\psi(x)\}
と書くことができます。ところで、この公理で x\in u の条件を外した
\exists v\forall x(x\in v\leftrightarrow\psi(x))
は公理として認められないことを確認しました。例えば \psi(x)\equiv x=x とおくと
v=\{x|x=x\}
は最早集合ではありません。もし集合だとすれば等号公理により v=v ですから v\in v ということになり、正則性の公理に反してしまいます。

しかし、このように、集合とは認められないものの集まりを扱うことは、場合によっては便利です。そこで、このようなものの集まりをクラスと呼んで便宜を図ることにします。

厳密には、論理式 \varphi(x,x_1,\dots,x_n) とパラメータ a_1,\dots,a_n が与えられたとき、\varphi(x,a_1,\dots,a_n) が成り立つ x の全体のことをクラスと言います。クラスは英大文字を用いて
A=\{x|\varphi(x,a_1,\dots,a_n)\}
のように表します。x\in A とは \varphi(x,a_1,\dots,a_n) が成り立つことと解釈します。

例えば、上で例を挙げた
V=\{x|x=x\}
は立派なクラスです。しかもこれは任意の集合を要素として持つクラスです。この V はしばしば集合論宇宙と言われます。また、V は集合ではありませんでした。このような、集合ではないクラスのことを固有クラスと言います。集合もまた立派なクラスですから、区別するためにこのように呼びます。