数学・基礎論

集合論の公理系(その 13)

同値関係と商集合 前回、集合 a 上の関係と、特に重要な関係として同値関係を定義しました。今、a 上の同値関係 r が与えられたとき、 に対して と定義すると、 です。そして が成り立ちます。そこで の部分集合である のことを a の(同値関係 r による)商集…

集合論の公理系(その 12)

前回、二つの集合 a , b の直積 を定義しました。今回は、それを用いて、対応・写像・関係のお話をします。 対応と対応の合成、逆対応 二つの集合 a , b に対して、 の部分集合、すなわち の元を、a から b への対応と言います。 を対応とし、 とするとき な…

集合論の公理系(その 11)

しばらくぶりでした。今回は、分出公理図式を使って、いろいろな集合を定義してみましょう。 差集合 集合 a , b に対し、分出公理図式で として定まる集合を と書き、差集合と言います。 共通部分(交わり) とします。このとき をひとつ固定して とおきます。…

集合論の公理系(その 10)

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。さて、話題の方は昨年からの続きです。 置換公理図式 置換公理図式 が の論理式ならば、次の形の論理式は公理である。 ただし、 は z , v を自由変数として含まないものと…

集合論の公理系(その 9)

どうも。仕事が忙しいのでまたまたご無沙汰してしまいました。ここからは、再び公理系の紹介に戻ります。 無限公理 無限公理 この a は を要素として含み、そのことから を要素として含みます。そして、そのことから を要素として含み…というように、無限*1…

集合論の公理系(その 8)

今回は、前回の公約どおり、ここまでの公理系を用いて示すことが出来る集合の性質を見て行きます。 部分集合に関する性質 証明は簡単なので、結論のみ。 和集合に関する性質 (i) (証明) (ii) (証明) 対公理により 最後の同値は (i) による。 空集合に関する…

集合論の公理系(その 7)

ここまでは、与えられた集合に対して、新たな集合を作ることが出来る、という公理が中心で、具体的な集合の存在には言及していませんでした。しかし、今度の公理は、具体的な集合の存在に言及している、という意味では、他の公理とは大きく性質が異なります…

集合論の公理系(その 6)

和集合公理 和集合公理 この公理は、与えられた「集合からなる集合」に対して、それらの集合の要素を全ての要素とする集合(和集合)の存在を主張します。このような y はやはり一意的に定まり、それを で表します。特に のことを と書きます。 べき集合公理 …

集合論の公理系(その 5)

対公理 対公理 外延公理により、このような集合 z はただ一つしかありません。この公理によって x , y が与えられたときにその存在が保証される集合を と書きます(対集合)。特に のことを と書き、x のシングルトン(singleton)と言います。定義より直ちに が…

集合論の公理系(その 4)

さて、先刻の予告どおり、集合論の公理系の紹介を再開します。前回から一週間開きましたが、記号論理には慣れていただけたでしょうか ? 外延公理 外延公理 ここで、本来は x , y も全称記号で閉じて と書くべきですが、それを省略して書いています。こういっ…

集合論の公理系(その 3)

何事も練習ですので、ここで述語論理の公理系を用いる練習を二つほどやっておきましょう。 練習 1. 公理 2 を以下の形に書き換えます。 公理 3 とモーダス・ポーネンスから … (1) です。また、再び公理 2 を書き換えて … (2) です。公理 4 を書き換えて また…

集合論の公理系(その 2)

集合論の公理系をやる前に、述語論理の公理系を先に述べておきます。 一階述語論理の公理系と推論規則 一階述語論理は、以下の公理系と推論規則を持ちます。 公理系 ただし t は定数記号、あるいは x 自身、もしくは、x とは異なる変数 y であって、限定作用…

集合論の公理系(その 1)

前回までで圏論を軽く(?)紹介しましたが、ここで改めて(?)、集合論を公理的に見直してみましょう。今回は準備に留め、本格的に公理系を述べるのは次回以降にしたいと思います。 記号系と形成規則 今、集合論を公理的に扱うために、いくつかの記号を用意しま…

一般連続体仮説とその問題

を任意の順序数とするとき、一般連続体仮説とは を主張するものです。 の場合を単に連続体仮説、と言うことが多いようです。 さて、連続体仮説()においては、 であって欲しい、というのがもっぱらの主流らしい、ということは前回も書いたとおりなのですが、…

連続体問題

くるるさん(id:kururu_goedel)のところでなにやらいろいろと書かれている「連続体問題」ですが、これはカントールが提唱した連続体仮説に関するお話のようです。連続体仮説を集合の濃度の記号を用いて表すと、その主張は 「 であろう」 と言うもので、ZF 公…

様々な収束の概念(その 3)

上極限と下極限 一般に、実数列 が与えられたとき、これが必ず収束するとは限りません。ところが とおくと、それぞれ となりますので、( となる場合も込めて) と は存在することがわかります。このとき を の上極限、 を の下極限 と言い、それぞれ で表しま…

数学的帰納法は帰納的 ? 演繹的 ?

今日、数学掲示板にて「数学的帰納法は帰納的か演繹的か」という質問を頂きましたが、私はこの手の話に詳しくないので、良くわかりません。どなたか偉い人が降臨するのを待つよりありません。 的外れかもしれませんが、 … (*) を数学的帰納法で証明するなら…

0 で割れない理由

良く、「0 で割ることは出来ない」と言いますが、その説明のしかたは様々です。ここでは、私なりの説明をしてみます。*1 ある数 x が 0 で割れたとして、その答を y としましょう。すると となります。従って、両辺に 0 を「掛け」て となります。従って、あ…

1 + 1 は何故 2 か

"1 + 1 = 2" という事実を、私達は、さも当たり前のように考えています。しかし、「どうして ?」と聞かれると、多分答えられる人は少ないでしょう。 一つの見方として、"1 + 1 = 2" は "2" の定義である、という考え方があります。以下順次 2 + 1 = 3 , 3 + …