数学・幾何

ポアンカレ予想を困難にさせていたもの(続き)

先日の記事に頂いたコメントに、この場を借りてお返事。 id:kai-kimiyoshi 様 Whitehead の定理とは、この文脈では X , Y を高々 n 次元の多面体とし、f : X → Y を連続写像とする。f が導くホモトピー群の準同型写像 が に対して同型であるならば、f はホモ…

ポアンカレ予想を困難にさせていたもの

ポアンカレ予想(Poincaré conjecture)とは、位相幾何学の用語を用いると「単連結な 3 次元多様体は 3 次元球面に同相である」というものです。基本的な用語の定義を知っていれば、この予想の言おうとしていることはわかるはずです。 ところが、その証明には…

サイバーグ・ウィッテン理論

かつての 4 次元トポロジーは、ドナルドソンの仕事によるところが大きく、それによって多くの結果が得られてきました。しかし最近になって、「サイバーグ・ウィッテン方程式」と言われる方程式を調べることによって、4 次元トポロジーは飛躍的な発展を遂げ、…

エキゾチック 4 次元 Euclid 空間

Euclid 空間には、ごく自然な方法で可微分構造が入ります。我々は、それを普段意識することはありませんが、関数を微分するときなどは、当然のことながら、その「自然な」可微分構造の元で行っているわけです。 ところが、4 次元 Euclid 空間、いわゆるには…

7 次元エキゾチック球面

7 次元球面には、通常の可微分構造のとは違う可微分構造を持った物が存在します。これは微分トポロジーの分野では良く知られた有名な事実なのですが、その個数について、正確に知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。答は「15 個」です。一般的に…

ホモロジー群とホモトピー群

多様体にホモロジー群が定義できるのと同様にして、「ホモトピー群」というものが定義できます。これは基本群(= 1 次ホモトピー群)の拡張のようなものです。名前は似ていますが、両者には大きな違いがあります。 n 次元多様体を考えます。このとき、(n + 1) …

Euler 数

多様体には、「Euler 数」と呼ばれる一種の不変量が定義できます。例えば n 次元球面の Euler 数はとなることがわかっています。従って、n が奇数ならば、Euler 数は 0 になります。一方で球面の Euler 数は 2 になりますが、皆さんは、正多面体等で (頂点の…

逆にしても鏡に映しても

「8 の字結び目」(画像参照)と呼ばれる結び目があります。結び目理論では型の結び目になります。 さて、一般に、結び目に対してはその「逆」と「鏡像」というものが定義できます。 逆 結び目には向きをつけることが出来ますが、そのつけた向きと逆の向きをつ…

えっ、結び目で多項式 !?

結び目からは、その結び目に特有の多項式が、様々な方法によって導き出され、結び目を特徴付ける、いわゆる「不変量」としての性格を持っています。 結び目における最も基本的な多項式は Alexander 多項式です。最も簡単な(自明でない)結び目は、数学界では …

角の三等分は何故不可能か

例えば 30°は三等分できません。30°/3 = 10° を作図するにはがわかればできます。 三倍角の公式と を用いると、は という三次方程式を満たします。ところが、この三次方程式、有理係数で既約なのです。ということは、有理数体に を付け加えてできる拡大体は…