三角関数を積分を用いて定義する(その 1)

今、y を任意の実数として、y の関数 x=f_0(y)
f_0(y)=\int_0^y\frac{dt}{1+t^2}
で定義します。このとき
\int_0^\infty\frac{dt}{1+t^2}
は有限の値に収束します。なぜならば
\int_0^\infty\frac{dt}{1+t^2}=\int_0^1\frac{dt}{1+t^2}+\int_1^\infty\frac{dt}{1+t^2}<\int_0^1\frac{dt}{1+t^2}+\int_1^\infty\frac{dt}{t^2}
だから。そこでこの値を仮に a としておけば
\int_0^{-\infty}\frac{dt}{1+t^2}=-a
もわかります。また
\frac{df}{dy}=\frac{1}{1+y^2}>0
なので、この関数は y に関して単調増加です。従ってこれは \mathbb{R}=(-\infty,\infty) から (-a,a) への全単射であり、その逆写像が定義できます。これを y=g_0(x) としておきます。
今、x,x_0\in(-a,a) に対して、f_0(y)=x,f_0(y_0)=x_0 を満たす y,y_0\in\mathbb{R}x,x_0 に対して一意に定まります。そして積分平均値の定理により
|x-x_0|=\frac{|y-y_0|}{1+\alpha^2}
を満たす \alpha(ただし \alphayy_0 の間の実数)が存在しますから、関数 g_0(x) は任意の x_0\in(-a,a) で連続、従って逆関数の定理により、g_0(x)C^1 級の関数になります。
同様に、整数 n に対して
f_n(y)=2na+\int_0^y\frac{dt}{1+t^2}
とおくと、これは \mathbb{R} から ((2n-1)a,(2n+1)a) への全単射であり、同じように C^1 級の逆関数 g_n(x) が定義できます。ここで x\in((2n-1)a,(2n+1)a) に対して
x=2na+\int_0^{g_n(x)}\frac{dt}{1+t^2}
ですから
x-2na=\int_0^{g_n(x)}\frac{dt}{1+t^2}
となり、容易に g_n(x)=g_0(x-2na) が示されます。従って、x\neq (2n-1)a(n\in\mathbb{Z}) なる実数 x に対して、周期が 2a の関数 g(x) を定義することができ、
\lim\limits_{x\to(2n-1)a-0}g(x)=+\infty,\lim\limits_{x\to(2n-1)a+0}g(x)=-\infty
がわかります。この g(x)\tan x と定義します。(続く)