さて、有限群 G の表現 が与えられたとき、G×G-準同型
が与えられるわけですが、言うまでもなく ですから、 です。従って、V が既約であれば前回の結論から も既約なので 、すなわち は全射です。従ってマシュケの定理により、K[G] は に同型な部分空間 W を含みます。これを と同一視すると
と直和分解できます。ここで、 はもちろん、 も K[G] の両側からの作用で閉じている、いわゆる両側イデアルですから、これは環の直和分解ともみなせます。
このようなことを、G の(同値でない)既約表現全体に対して行いたいわけですが、実はそれは可能で、
を、互いに同値でない既約表現(の代表元みたいなもの)の全体とするとき、環として
と直和分解するのです ! この証明はやや長いので、「加群十話―代数学入門 (すうがくぶっくす)」にお任せすることにします。さて、この両辺の K 上ベクトル空間としての次元を比較すると
なる等式が得られます。これは、最初に紹介した
とますます似通っています。
実は同じもの
と
は似ている、と言う話をしましたが、実はこの両式は、全く同じ意味を持っているのです ! もちろんここでは証明できませんが、n 次の Young 図形のそれぞれに対応して、対称群 の既約表現が一つ決まり、その表現の次元は基となる Young 図形において可能な標準盤の個数に一致する、ということが知られているのです。このことを言いたいがために、今まで一般論をグダグダとやってきたわけです。
例えば n = 3 で考えるとすぐにわかることとして、 の既約表現は、互いに同値でない 1 次の既約表現が二つと、2 次の既約表現が一つある、ということがわかります。実際、3 次の Young 図形は三通りあり、
に対応する標準盤は
の 1 個、
に対応する標準盤は
の 2 個、
に対応する標準盤は
の 1 個ですから、 で辻褄が合います。
このあたりのことをもう少し知りたい人には
- 「加群十話―代数学入門 (すうがくぶっくす)」(堀田良之著、朝倉書店)
- 「ヤング図形のはなし (日評数学選書)」(寺田至著、日本評論社)
の 2 冊をお勧めします。