三角関数を積分を用いて定義する(その 3)

さて、前回定義した \cos x について
\frac{d}{dx}(\cos x)=\left\{\begin{array}{cl}1&(x=(4m-1)a)\\-\frac{\tan x}{\sqrt{1+\tan^2x}}&((4m-1)a<x<(4m+1)a)\\-1&(x=(4m+1)a)\\\frac{\tan x}{\sqrt{1+\tan^2x}}&((4m+1)a<x<(4m+3)a)\end{array}
となることがわかりました。これをもう一度微分すると
\frac{d^2}{dx^2}(\cos x)=\left\{\begin{array}{cl}0&(x=(4m-1)a)\\-\sqrt{\frac{1}{1+\tan^2x}}&((4m-1)a<x<(4m+1)a)\\0&(x=(4m+1)a)\\\sqrt{\frac{1}{1+\tan^2x}}&((4m+1)a<x<(4m+3)a)\end{array}\right\}=-\cos x
となります。このことから、\cos xC^\infty 級の関数となることがわかります。そしていよいよ
\sin x=\cos x\tan x=\left\{\begin{array}{cl}-1&(x=(4m-1)a)\\\frac{\tan x}{\sqrt{1+\tan^2x}}&((4m-1)a<x<(4m+1)a)\\1&(x=(4m+1)a)\\-\frac{\tan x}{\sqrt{1+\tan^2x}}&((4m+1)a<x<(4m+3)a)\end{array}
と定義します。これで、さしあたり必要な三種類の三角関数が定義できました。\sin xC^\infty 級の関数となり、\sin^2x+\cos^2x=1 などの良く知られている性質は全てこれらの定義から導くことが出来ます。(続く)

k 次微分形式

滑らかな多様体 M と M 上の点 p が与えられたとき、接空間 T_p(M) が構成できます。これは p の適当な近傍 U の上で滑らかな関数の全体 R=C^\infty(U) 上の自由加群です。従って双対空間 T^*_p(M) が定義できます。これが余接空間と言われるものです。そして、p の近傍 U で定義される微分形式とは、R-加群 T^*_p(M) 上の外積代数 \wedge(T^*_p(M)) の元に他なりません。

三角関数を積分を用いて定義する(その 4・最終回)

今や sin , cos , tan は解析的に定義され、それらの満たすべき性質も導くことができます。また、a に関しては、円周の長さと直径の比が 2a になることも確かめられます。
今回は、そういう話は横に置いて、a とはいかなる値なのかをちょっと調べてみます。簡単な変数変換によって
\int_0^1\frac{dt}{1+t^2}=\frac{a}{2}
が確かめられます。そして |x|<1 のとき
\int_0^x\frac{dt}{1+t^2}=\sum\limits_{n=0}^\infty\int_0^x(-1)^nt^{2n}dt=\sum\limits_{n=0}^\infty\frac{(-1)^nx^{2n+1}}{2n+1}
も(級数の知識を必要としますが)わかります。ところが、x\to 1-0 のとき、右辺の級数は収束することが知られています。よって
\frac{a}{2}=\int_0^1\frac{dt}{1+t^2}=\sum\limits_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{2n+1}=1-\frac13+\frac15-\frac17+\cdots
となります。この右辺の級数は、収束は遅いのですが、確実に収束します。それは我々が既に知っている \frac{\pi}{4} の値に一致します。すなわち、今まで a と書いてきたものは、実は \frac{\pi}{2} に等しいものだったのです !
逆に
a=\int_0^\infty\frac{dt}{1+t^2}
の値の 2 倍、すなわち 2a を持って \pi とする流儀もあります。

平行移動を一次変換と思う

xy-平面において、一次変換は原点を動かしません。従って、平行移動を一次変換と思うことは、一見無理に見えます。しかし、です。
P=\left\{\begin{pmatrix}x\\y\\1\end{pmatrix}\middle|(x,y)\in\mathbb{R}^2\right\}
を xy-平面とみなすと
A=\begin{pmatrix}a&b&c\\a'&b'&c'\\0&0&1\end{pmatrix}
の形をした行列は P を P の中に写します。なぜならば
\begin{pmatrix}a&b&c\\a'&b'&c'\\0&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\\1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}ax+by+c\\a'x+b'y+c'\\1\end{pmatrix}\in P
だからです。このように解釈することで、二次曲線の分類が二次形式の標準化の問題になり、行列の知識を用いてこれを行うことができます。