三角関数を積分を用いて定義する(その 4・最終回)

今や sin , cos , tan は解析的に定義され、それらの満たすべき性質も導くことができます。また、a に関しては、円周の長さと直径の比が 2a になることも確かめられます。
今回は、そういう話は横に置いて、a とはいかなる値なのかをちょっと調べてみます。簡単な変数変換によって
\int_0^1\frac{dt}{1+t^2}=\frac{a}{2}
が確かめられます。そして |x|<1 のとき
\int_0^x\frac{dt}{1+t^2}=\sum\limits_{n=0}^\infty\int_0^x(-1)^nt^{2n}dt=\sum\limits_{n=0}^\infty\frac{(-1)^nx^{2n+1}}{2n+1}
も(級数の知識を必要としますが)わかります。ところが、x\to 1-0 のとき、右辺の級数は収束することが知られています。よって
\frac{a}{2}=\int_0^1\frac{dt}{1+t^2}=\sum\limits_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{2n+1}=1-\frac13+\frac15-\frac17+\cdots
となります。この右辺の級数は、収束は遅いのですが、確実に収束します。それは我々が既に知っている \frac{\pi}{4} の値に一致します。すなわち、今まで a と書いてきたものは、実は \frac{\pi}{2} に等しいものだったのです !
逆に
a=\int_0^\infty\frac{dt}{1+t^2}
の値の 2 倍、すなわち 2a を持って \pi とする流儀もあります。