Fermat の最終定理に挑む(その 1)

少し予定を変更して、圏論を始める前に、フェルマー(Fermat)の最終定理にまつわる話をしたいと思います。
フェルマーの最終定理とは

n が 3 以上の自然数のとき x^n+y^n=z^n を満たす自然数解 (x,y,z) は存在しない

というものです。

n は奇素数、または 4 と仮定してよい

この問題は、n が奇素数、または 4 の場合に示すことが出来れば十分であることは、すぐに分かります。
実際、n が素数でなくて、ある奇素数 p で割り切れるならば n=mp と書けるので
x^n+y^n=z^n

(x^m)^p+(y^m)^p=(z^m)^p
となり、X^p+Y^p=Z^p自然数解が存在しなければ x^n+y^n=z^n にも自然数解が存在しないことが、対偶を取ることによって分かります。
それ以外の n については 4 で割り切れるので n=4k と書け、
x^n+y^n=z^n

(x^k)^4+(y^k)^4=(z^k)^4
となり、X^4+Y^4=Z^4自然数解が存在しなければ x^n+y^n=z^n にも自然数解が存在しないことが、対偶を取ることによって分かります。

x と y は互いに素であると仮定してよい

x^n+y^n=z^n
自然数解が存在すると仮定して、\gcd(x,y)=d としましょう。このとき x=dx',y=dy',\gcd(x',y')=1 と書けるので
z^n=d^n{x'}^n+d^n{y'}^n=d^n({x'}^n+{y'}^n)
ですから、z^nd^n で割り切れます。従って、素因数分解の一意性から z が d で割り切れることになります(後で詳しく解説)。従って z=dz' と書くことが出来て、なおかつ
{x'}^n+{y'}^n={z'}^n,\gcd(x',y')=1
が成り立ちます。
さて、先ほど端折った部分をちょっと丁寧にやってみましょうか。
z の素因数分解
z={p_1}^{e_1}\dots{p_m}^{e_m}
により
z^n={p_1}^{ne_1}\dots{p_m}^{ne_m}.
一方、d の素因数分解
d={q_1}^{f_1}\dots{q_k}^{f_k}
により
z^n={q_1}^{nf_1}\dots{q_k}^{nf_k}{q_{k+1}}^{f_{k+1}}\dots{q_l}^{f_l}
(ただし q_{k+1},\dots,q_l の中には、q_1,\dots,q_k のどれかに一致するものがあってよい).
従って、素因数分解の一意性により f_{k+1},\dots,f_l は全て n の倍数となり、
z={q_1}^{f_1}\dots{q_k}^{f_k}{q_{k+1}}^{f_{k+1}/n}\dots{q_l}^{f_l/n}
は d で割り切れる。