Fermat の最終定理に挑む(その 2)

ピタゴラス

いきなり最終定理に挑む前に、n = 2 の場合、すなわち
x^2+y^2=z^2,\gcd(x,y)=1 … (*)
を満たす自然数解について考えて見ましょう。そのようなものは無限に存在し、それらはピタゴラス数(pythagorean number)と言われます。ピタゴラス数は、具体的に表すことが出来ます。以下、それを示しましょう。
まず、x と y がともに奇数であるとすると、x^2\equiv 1\pmod{4},y^2\equiv 1\pmod{4} なので
z^2=x^2+y^2\equiv 2\pmod{4}
となり矛盾します。従って、どちらか一方は偶数となるので、x が偶数であるとして一般性を失いません。そうすると、y と z はともに奇数となり、また x と y が互いに素なので、y と z も互いに素です。
このとき、\frac{z+y}{2},\frac{z-y}{2} はともに整数、特に自然数で、なおかつ互いに素です。実際 y と z が互いに素なので
pz+qy=1
を満たす整数 p , q が存在し、
(p+q)\frac{z+y}{2}+(p-q)\frac{z-y}{2}=pz+qy=1
となるから。
そこで (*) 式を変形すると
(\frac{z+y}{2})(\frac{z-y}{2})=(\frac{x}{2})^2
となるので、上記のことと素因数分解の一意性から
\frac{z+y}{2}=a^2,\frac{z-y}{2}=b^2,a>b>0
となる互いに素な整数 a , b が存在することが分かります。またこのとき
a+b\equiv a^2+b^2=z\equiv 1\pmod{2}
が分かります。従って
x=2ab,y=a^2-b^2,z=a^2+b^2,
a>b>0,\gcd(a,b)=1,a+b\equiv 1\pmod{2}
なる一般解を得ます。逆に x , y , z がこの形であれば
x^2+y^2=(2ab)^2+(a^2-b^2)^2=(a^2+b^2)^2=z^2
であり、\gcd(x,y)=d とすると d|z により
d|y=a^2-b^2,d|z=a^2+b^2
が成り立ちます。故に
d|(z+y)=2a^2,d|(z-y)=2b^2
となり、\gcd(a,b)=1 により d=1 または d=2 のいずれかでなければなりませんが、
y=a^2-b^2\equiv a^2+b^2\equiv (a+b)^2\equiv 1\pmod{2}
により y が奇数であることが分かるので d=1 となり、一般解はこの形に限ることが分かります。