では実際に K を代数閉体として、K[t]-加群 M に対して
を示しましょう。まず として、h を
と因数分解します(ただし )。このとき
と直和分解できます。従って
です。ここで です。従って
でなければいけません。従って が成り立ち
が示されたことになります。
さて、 として、K[t]-加群 M の組成列とは
なる部分加群の列で、各 が K[t]-単純であるもののことでした。K[t]-単純ならば、それは K 係数の 1 次元ベクトル空間です。このことから驚くなかれ、M は実は K 上の n 次元ベクトル空間になってしまうのです !
話を元に戻して、完全列
において で ですから、上の事実から となります。かくして、めでたく
が完全列となることがわかり、 の有限表示を得ました。従って
なので、 を、行列 の単因子を求めることによって、Jordan 標準形が計算できる、という寸法だったのです。
ところで、ちょっと思い出してほしいのですが、これまでの話から K[t]-加群としての について であり、 は A の最小多項式が生成元であることは以前にお話しました。 ですから、これはまさしく、A の特性多項式が A の最小多項式で割り切れる、という状況そのものです。従って、ここまでの議論の副産物として、かの有名な
- 定理(Hamilton-Cayley)
- (零行列)
の別証明が得られたことになります。