Lebesgue - Stieltjes 測度と Radon - Nikodym 微分(その 6)

2,3 の事実の証明を省いたものの、証明は徐々に完成に近づいてきました。残るは補題 2 です。しかし、補題 2 の証明のためには以下の補題が必要です。

補題 3

A\in\mathbb{R}^d を任意の(可測でなくても良い)集合とする。今、A を覆う球の族 \mathcal{B}=\{B_\kappa|\kappa\in K\} を考え、これに属する球の直径は有界であるとする。すなわち
\sup\{{\rm diam} B:B\in\mathcal{B}\}<\infty.
このとき、族 \mathcal{B} から、互いに共通部分を持たない高々加算個の B_1,B_2,\dots を取り出して
\sum m(B_n)\geq 5^{-d}m^*(A)
とできる。

差し当たり、この補題 3 を用いて、先に補題 2 を証明します。
M'f(x) の定義により、M'f(x)>\alpha ならば、x を端点に持つ区間 I
\int_I |f(t)|dt>\alpha m(I) … (*)
を満たすものが取れます。I の長さを \rho とすれば
\alpha\rho\leq ||f||_1
故、\rho有界です。そこで (*) を満たす区間の族を \mathcal{I} とすれば、これは
E_\alpha=\{x:M'f(x)>\alpha\}
に対して補題 3 の条件を満たす族となるので
I(1),I(2),\dots\in\mathcal{I},I(j)\cap I(k)=\emptyset(j\neq k),
\sum m(I(n))\geq m(E_\alpha)/5
を満たすものが取れます。(*) と合わせて
\begin{align}m(E_\alpha)&\leq 5\sum m(I(n))\\&\leq\frac{5}{\alpha}\sum\int_{I(n)} |f(t)|dt\\&\leq\frac{5}{\alpha}||f||_1\end{align}
となり、補題 2 は示されました。
いよいよ次回、補題 3 を証明します。これで定理の証明は(一部省略しましたが、ほぼ)完成です。