Hilbert 空間における弱収束
今、
を考えます。このとき
を内積として、 は Hilbert 空間になります。内積によってノルムが定義され、従って は距離空間ですから、その距離による普通の意味での収束の概念が与えられます。
さて、ちょうど i 番目だけが 1 で、他は 0 であるような数列を とおくことにします。このとき の点列
は、距離の意味では収束しません。なぜなら のとき なので、収束のために必要な Cauchy の条件を満たさないからです。
しかし、1 の「居場所」は n が無限に大きくなるにつれてどんどん「遠く」なっていきますから、何らかの意味で 0 に「収束」して欲しい、と期待するわけです。
そこに持ってきて、任意の に対して
が成り立つわけですから、この意味では 0 に収束すると言えなくもありません。実はこれは通常の収束の概念とは違う新しい収束の概念で、このように Hilbert 空間 H の点列
が、任意の に対して
を満たすとき、点列 は に弱収束すると言います。もちろん収束すれば弱収束しますが、逆が成り立たないことは先程の例から明らかですね。
この弱収束という概念は、ditribution の収束の定義に使われたりします。