さて、 は K[t] 上有限生成な捩れ加群です。*1そこで話を一般化して、単項イデアル整域 R 上の有限生成捩れ加群 M についての話をします。*2
に対して の零化域を
と定義します。これは R のイデアルになります。これは一般の環 R と左 R-加群 M に対して定義できるものです。 のときは を単に と書きます。
R が単項イデアル整域であれば
を満たす が、R の可逆元との積の違いを除いて一意に定まります。これを x もしくは Rx*3の位数と言います。
さて と表されたとすると、r の素元分解
( は R の可逆元)
に対して Chinese Remainder Theorem によって
と直和分解できます。そこで R の素元 p に対して
と定義します。同じことですが
です。これを M の p-成分と言います。これによって M は
(p は R の素元全体を動く)
となることがわかります。*4ところが
なので、p は r の素因子でなければならず、 となる p は、実は有限個しかありません。従って、r の素元分解に対応して
となっているのが実際のところです。
ところで、M が有限生成ですから、その部分加群である M(p) も有限生成です。従って長さ有限の組成列を持ちます。ここで、R-加群 M の組成列とは
なる部分 R-加群の列で、各 が R-単純であるものを言います。このとき、n の値は M によってのみ決まるので、これを M の長さと言い、 で表します。
さて、M(p) に対して R のイデアル を M(p) の位数(または容量)と言います。また、
のとき、イデアルとしての積
を で表し、M の位数(または容量)と言います。容易にわかるように
なので、必然的に
が従います。もし と表されていたならば b|a、すなわち、b は a を割り切ることになります。これは、ちょうど行列 A の最小多項式が、特性多項式 を割り切る状況に似ています。実際、K[t]-加群としての に対しての は A の最小多項式によって生成されることは容易にわかります。ただし、 の生成元が何であるかは、まだ未知の世界であり、さらに議論が必要になります。(続く)