黄金比(後編)

1,2,\frac32,\frac53,\frac85,\frac{13}{8},\frac{21}{13},\ldots
この数列、実はある法則に従っています。

連分数展開との関係

前回、黄金比 x=\frac{1+\sqrt{5}}{2} が満たすべき二次方程式
x^2-x-1=0
を導き出しました。この式をちょっと変形すると
x=1+\frac1x
なる式が現れます。ここで、右辺の x に、右辺の式そのものをそっくり代入することができて
x=1+\frac{1}{1+\frac1x}
となります。この作業は延々と繰り返せて、さらに
x=1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac1x}}=1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac1x}}}=\cdots
とできます。このことを
\frac{1+\sqrt{5}}{2}=1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\cdots}}}}
と書きます。このように、無理数を、無限に続く連分数の形に表すことを連分数展開と言います。この作業を途中で打ち切って計算すると、最初の数列が表れるのです。

フィボナッチ数列との関係

フィボナッチ数列とは、漸化式
a_1=1,a_2=1,a_{n+2}=a_{n+1}+a_n(n\geq 1)
で定義される数列のことですが、ここで b_n=\frac{a_{n+1}}{a_n} とおくと、この漸化式は
b_1=1,b_{n+1}=1+\frac{1}{b_n}(n\geq 1)
と変形できます。実はこの数列 \{b_n\} も、最初に紹介した数列に一致します。従って、先程の連分数展開との関係からわかるように、この数列は黄金比 \frac{1+\sqrt{5}}{2} に収束します。そう、フィボナッチ数列の隣り合う項の比は、黄金比に近づいていくのです。