三次方程式にまつわる話

三次方程式の解の公式を発見したと言われるジェロラモ・カルダノ(1501-1576)について書きます。
さて、そもそも三次方程式の解法を最初に発明したのは、スキピオネ・デル・フェルロ(1465-1526)であると言われています。彼はx^3+ax+b=0の形の三次方程式に対する一般的な解法を発見していました。その一方でタルタリア(1499-1557)*1が、全く独自により一般的な三次方程式の解法を見つけていました。そこでデル・フェルロの弟子、アントニオ・マリア・フィオレは、師匠から解法を教えてもらい、タルタリアとの代数試合に望みます。しかし、タルタリアはフィオレが出した全ての問題に正解したのに対し、フィオレはタルタリアが出した問題を一問も解けなかった、という逸話が残っています。
さて、カルダノは、タルタリアに対し、「他の人間には絶対に教えないから」と言って熱心に頼み込み、ついに彼からその「方法」だけを教えてもらうことに成功します。しかしカルダノは、タルタリアとの約束を破り、(若干手を加えて)それをあたかも自らの業績であるかのように発表してしまったのです。*2怒ったタルタリアは、カルダノに代数試合を申し込みますが、カルダノは逃げ出し、代わりに彼の弟子、ロドヴィコ・フェラリ(1522-1565)*3がこれを受けます。冷静さを失ったタルタリアは完敗し、その後も三次方程式の解法は自分の業績であることを主張し続けましたが退けられ、「カルダノの解法」として現在まで語り継がれているのです。

*1:「タルタリア」とは、イタリア語で「どもる人」を意味するもので、本名はニコロ・フォンタナと言います。一説には、フランス兵にサーベルであごを切り裂かれ、まともにしゃべれなくなったと言われています。

*2:この一件から、カルダノは余り良い印象は持たれていませんが、実際は、医師・占星術師としても活躍するなど、多才な人物だったようです。数学における彼の専門は確率論でした。これは彼が賭け事が好きだったからだと言われています。

*3:彼は後に四次方程式の解法を編み出します。