Fermat の最終定理に挑む(その 13)

以下、断りがなければ整数は \mathbb{Q}(\sqrt{5}) における整数とし、\omega=\frac{1+\sqrt{5}}{2},\bar{\omega}=\frac{1-\sqrt{5}}{2}、また \lambda=\sqrt{5} とします。

n = 5 の場合

問題を変形・一般化し、さらに前回証明した補題 5 を使って

x^5-y^5=E\lambda^{5+\mu}z^5,xyz\neq 0 … (*)
\mathbb{Q}(\sqrt{5}) の整数を解に持たない。ただし \mu は非負の有理整数、E は単数、x,y,z,\lambda はどの二つも互いに素とする。

を示せばよいことがわかります。

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Fermat の最終定理に挑む(その 14)

n = 5 の場合(続き)

前半で、
x^5-y^5=E\lambda^{5+\mu}z^5,xyz\neq 0 … (*)
の解 \{x,y,z,E,\mu\} から新しい解 \{u,v,w,E_4,2\mu\} を構成する方法を見ました。この方法をどんどん繰り返せば、z=uv\sqrt{w}{E_5}^{-1} という関係から、z素因数分解したときに現れる相異なる素因数の数を少なくできる可能性があります。このことから、z としては素因数分解したときに現れる素因数の数が最も少ないものを初めから選ぶことが出来ます。このとき、u,v は単数になります。事実 u,v,w は互いに素ですから、共通する素因数を持ちません。従って u,v が単数でないとすれば w に現れる相異なる素因数の個数は z よりも少なくなり、最小性に反します。
さて、上記のような z に対して解 \{x,y,z,E,\mu\},\{u,v,w,E_4,2\mu\} を構成し、さらに \{u,v,w,E_4,2\mu\} から新たな解 \{u_1,v_1,w_1,E_6,4\mu\} を構成します。このとき
{u_1}^5-{v_1}^5=E_6\lambda^{5+4\mu}{w_1}^5
かつ
w=u_1v_1\sqrt{w_1}E_7 (E_7 : 単数)
u,v,u_1,v_1 はいずれも単数です。また
\left\{\begin{align}u-v&=E_8\lambda^{3+2\mu}{z_2}^5\\uv+\frac{\omega}{\lambda}(u-v)^2&=E_9{u_1}^5\\uv-\frac{\bar{\omega}}{\lambda}(u-v)^2&=E_{10}{v_1}^5\end{align}\right.
なる関係があります。ただし \gcd(z_2,\lambda)=1 かつ E_8,E_9,E_{10} は単数です。この第 2 式と第 3 式の両辺を掛け合わせて
\frac{u^5-v^5}{5(u-v)}=E_9E_{10}(u_1v_1)^5
を得ます。時に E=\frac{u}{v} とおけば E\neq 1 です。なぜなら E=1\Leftrightarrow u=v により E=1 ならば
E_4\lambda^{5+2\mu}w^5=u^5-v^5=0,
すなわち w=0 となって矛盾します。ところが
\frac{E^5-1}{5(E-1)}=E_9E_{10}(u_1v_1)^5v^{-4}
は単数であり、
E-1=E_8\lambda^{3+2\mu}{z_2}^5v^{-1}\equiv 0\pmod{5}
だから補題 3 により E=1 となって矛盾します。
従って (*) は \mathbb{Q}(\sqrt{5}) の整数を解に持たず、よって Fermat の最終定理は n = 5 のときも正しいことが示されました。
その後の Fermat 予想に対する研究経緯などを簡単に紹介するため、明日、もう一話だけ追加して、このシリーズを締めくくりたいと思います。